相続税対策でアパートを建てる

ある高齢の農家の方が、「アパートを建てると相続税が安くなる」というのは本当か、と相談に来られました。この方には2人の息子さんと3人のお孫さんがおりましたが、息子さんはそれぞれサラリーマンをしており、農家を継ぐ気はありません。お孫さんも小学校に入学したばかりで、今から押し付けることもできません。本人も病気をきっかけに体力が不安になり、農家をやめようかと思っている矢先にたまたま目にした折り込みチラシで、アパートを建てると相続税が安くなることを知ったそうです。

相続税の計算の仕組みをご説明し、どれくらい相続税が軽減されるかを試算したところ、具体的な建設費用や借入金、家賃収入の見込み等色々興味が湧いてきたようで、ついにハウスメーカーを巻き込んで建設計画を進めることになりました。

いざ建設に取り掛かろうと家族会議を開いたところ、借金の返済期間が35年。もしかすると孫の世代にまで借金を残してしまうかもしれない、ということに気づきました。

この男性は、相続税を安くするために、孫の世代にまで迷惑をかけたくない、と菓子折りを持ってハウスメーカーに謝りに行ったそうです。

相続対策というのは税金の対策ではなく、残された家族が困らないようにすることだと改めて実感した出来事でした。